『JALの奇跡』(致知出版社)
今回の本は、稲盛さんご自身ではなく
「側近中の側近」と呼ばれた大田嘉仁さんの著作です。
2010年に経営破綻した日本航空(JAL)。
その再建を託された稲盛さんは京セラから部下を二人だけ連れていき、
経営破綻したJALを2年で黒字回復。
しかも当時の過去最高益を出すという大きな成果を上げられました。
その時の様子を綴った本書から、今回は学んでいきましょう。
稲盛さんは会長就任2日目から精力的に現場を回り、様々な部署を見て仕事内容や仕事ぶりを見学したそうです。
そして、管理職の皆さんに向けて、お手紙を出されたのだそうです。
「再建の先頭に立ってほしい」
「倒産した事実を受け止め、JALの、また自分の何が悪かったのかを謙虚に反省してほしい」
「あそこまで上司が必死にやっているなら私も頑張ろう、と部下が自然に思えるくらい努力する必要がある」
本書には全文が紹介されていますが、こういった趣旨の手紙を管理職の皆さんへ出されたのだそうです。
また、こんな逸話も残されています。
JALに、お客様からの手紙が一通届きました。
飛行機が着陸し、荷物を取り出そうとして四苦八苦していた時、
隣の老紳士が荷物を取り出すのを手伝ってくれた上に、通路も先に譲ってくださったことがあったと。
あの老紳士は稲盛さんではないか、
だとしたら、お礼がきちんと伝えられなかったので
JAL宛にお手紙を書きました、というのです。
稲盛さんに聞くと、こうおっしゃったそうです。
「それは多分私だけれど、お客様を大切にするのは当たり前だろう」
この2つのエピソードは、まさに
『7つの習慣』にも通じるものがあると言えます。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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1つ目の手紙について。
稲盛さんは、
倒産の原因を外ではなく、自分の内側に求めてほしい
と、管理職の皆さんに伝えられました。
これはまさに「インサイドアウト」の考え方です。
自分の外部に原因や責任を求めるのではなく
自分の内面にあるものを変えることで、外にあるものを良くしていくこと。
自分の内側から現実を創っていく。
自分の内側から、状況を変えていく。
他人のせい、環境のせいにしても、状況は改善しません。
倒産の理由・原因を自分自身に求め、改善することで再建を目指していく。
このことを管理職の皆さんに伝えたいと思われたのではないでしょうか。
次に、お客様の荷物を取り出すことを
稲盛さん自らお手伝いしたことについて言えば
稲盛さんは「トリムタブ」になる実践を
されていたのではないか、と感じます。
「トリムタブ」とは、船に付いている小さな舵のこと。
タンカーのように大きな船の進路を変えるには、大きな舵が必要です。
この大きな舵を動かすために
トリムタブを使い、水の抵抗力を利用して大きな舵を動かす。
つまり、大きな物を動かすために、まずは小さなトリムタブを動かす。
一見小さなことかもしれません。
しかし、それがとても重要なことなのです。
稲盛さんはJALの再建に率先して行動する
「トリムタブ」の働きをされていたのではないか。
そして、自分自身にできることをする。
『7つの習慣』でいう「影響の輪」に集中する。
稲盛さんは、これを実践されたのだと思います。
それでは、今回はここまで。
次回もまた、『JALの奇跡』から題材を取り上げた動画をご紹介します。
■「JALの奇跡」vol.1
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。