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今回ご紹介する稲盛氏の著作は
『心。』(サンマーク出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4763132431
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「心が現実を作り、動かしていく」
「全ては心に始まり、心に終わる」
このことを伝えたいという稲盛さん。
その考えは、「7つの習慣」にも通じるものがある、という前回の内容でした。
そして今回は、その考え方が、組織や会社のリーダーシップにも大きく関わる、というお話です。
「心」が、会社経営に影響を与える。
こう聞くと、皆さんはどのように感じられるでしょうか。
稲盛さんは、心が企業の経営やリーダーシップに大きな影響を与える、と本書で説いていらっしゃいます。
稲盛さんは、2010年に経営破綻したJALの再建を手掛けられています。
その際、稲盛さんはそもそも経営破綻したということは、
トップも含め、全従業員がそうなる「心」を持ち合わせていたということだ、と言います。
では、どのように再建を進めるか。
稲盛さんは「心のありようを変える」ことから始めることにした、というのです。
私がまず行ったのは、これまでの経営者人生の中で大切にしてきた考え方、理念であり、行動規範でもあるフィロソフィーを説くことでした。
JALの再建にあたって、稲盛さんは最初の1ヶ月をかけて徹底的にリーダー教育を行いました。
しかし、JALの方々からの反発にあいます。
「再建に向けて時間がないのに研修などやる時間があるのか?」
「なぜ、このような子どもじみたことを今さら学ばなければならないのか?」
こういった声に対して、稲盛さんは次のように語ったそうです。
皆さんが幼稚といい、当たり前という、とてもシンプルなこれらの考え方を
皆さんは知識として持っているかもしれませんが、決して身に付いてはいないし、実践できてもいません。
それが会社を破綻に追い込んだ元凶なのです。
こうして、丁寧にフィロソフィーをJAL社内に浸透させていった結果、どうなったか。
JALは2年間で見事に復活し事業再生を遂げることができたのです。
JALの再建が実現できたのは、しっかりとした再建計画があり、
それを着実に実行していったことなど、様々な要因もあるでしょう。
一方で、従業員一人ひとりの想いが劇的に変わり、
言い換えれば「心の改革」が起こったことによって経営再建が実現できた。
稲盛さんはそう話されます。
これはまさに『7つの習慣』の著者であるコヴィー博士が言う「人格主義の復活」を
地で行くストーリーと言えるのではないでしょうか。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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コヴィー博士は、「人格の重要性」について完訳版『第8の習慣』で、次のように述べています。
リーダーが失敗する原因の90%は『人格』にある
確かな信頼関係・人間関係が生まれるところには、必ず信頼性(信頼される要因)がある。これは原則である。
信頼性は、人格と能力から生まれる。
人格を磨き、能力を高める努力をすれば、知恵と判断力という果実が得られる。
これこそが、長く続く偉大な業績と信頼の土台になる。
JALの再建に当てはめて考えてみると、
稲盛さんが会長に就任する前に、既に再建に向けた事業計画は存在していたのだそうです。
しかし、その計画を実行する人々の「人格」、稲盛さんの言葉を借りれば「心」が、結果・成果に大きな影響を与える。
稲盛さんは、そう考えていたのではないでしょうか。
そして『7つの習慣』は、「インサイドアウト」から始まり
最後に「再び、インサイドアウト」という章で締めくくられます。
稲盛さんもまた、「心に始まり、心に終わる」と本書で繰り返し述べられています。
何か事が起きた時、対処すべき時に
自分の外側に目を向けるのではなく、常に「自分の内側」を見つめる。
そこから、全てが始まっていく。
これもまた、稲盛さんとコヴィー博士の共通点と言えるのではないでしょうか。
■「心。」後編
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。