今回の動画では、稲盛氏の著作『生き方』(サンマーク出版)から、特に後半部分について解説しています。
稲盛氏の著作『生き方』、そして『7つの習慣』において共通していること。
それは、原理・原則を生き方や経営における判断基準とするということです。
しかし、皆さんの中には、こういう疑問が浮かぶ方も多いのではないかと思います。
ー 原理・原則を判断基準にすることで本当に経営が上手くいくのか? 人生で成功できるのか?
人生は、判断の連続です。
「本当にこの判断で正しいのか」と迷うこともあるでしょう。
また、会社経営は決して「きれいごと」だけで物事が進む世界ではありません。
ー 原理・原則を判断基準にして行動すると「損」をすることも起こりうるのではないか・・・?
そんなことを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その疑問に対して、稲盛氏は『生き方』の中で、こう答えています。
因果応報の法則というものが見えづらく、それゆえ容易に信じることができないのは、物事を短いスパンでしか捉えていないからです
稲盛氏は、人生を統御している二つの「見えざる手」があると言います。
一つは「運命」。
人は固有の運命を持って生まれ、その運命に導かれ、あるいは促されて人生を生きると言います。
もう一つは「因果応報の法則」。
善因は善果を生み、悪因は悪化を生むという法則です。
このことに関しては、『7つの習慣』でも同じことを書いています。
原則には必ず自然の結果が付いてくる。
原則と調和して生きていれば良い結果になる。
原則を無視した生活をしていたら悪い結果になる。
さらに稲盛氏は、「運命」よりも「因果応報の法則」の方が若干強い、と『生き方』の中で説きます。
運命に流されてあきらめて生きるのではなく、自ら善因を積み、善果を求めることで自分の運命は自ら変えられる。
それはまさに、「7つの習慣」で言う、第1の習慣「主体的であること」と通じるものがあるといえます。
稲盛氏は短期的にはさておき、長期的には因果のつじつまが必ず合う、と説明しています。
その実例が『生き方』の中で紹介されています。
京セラが通信機器メーカーをグループ会社として傘下に入れ、経営再建を目指した時のこと。
事業再建そのものの道のりが困難だったことに加え、
買収された側の社員の中には、稲盛氏の自宅まで押しかけ労働条件や処遇の改善を求める人までいたのだそうです。
しかし、稲盛氏はあきらめず継続的に努力を続け、その事業再建に取り組み続けました。
それから20年ほど経った後。
京セラはコピー機メーカー三田工業を買収、「京セラミタ」として事業再生を図ります。
京セラミタは抱えていた債務を予定よりも早く完済し、京セラグループの中核事業にまで成長を遂げていきます。
実は、この京セラミタの初代社長を務め、再建に大きな貢献をした方が、
かつて京セラに買収された某通信機器メーカーで工場長を務めていた方でした。
短期的な視点で見れば、某通信機器メーカーの再建は困難の連続。
「損をした」ように見える瞬間もあったかもしれません。
しかし、稲盛氏は「利他」「貢献」「努力」といった原則を判断基準として、再建に全力を尽くした。
その結果、その事業再建で「恩を受けた」と感じていた工場長が
20年後に京セラミタの再建で辣腕をふるい、
結果として大きな福音をもたらすこととなった・・・。
稲盛氏は言います。
二年や三年といった短い単位では結果は出にくいものなのです。
しかし、それも二十年、三十年といった長い単位で見れば、きちんと因果の帳尻は合っているものです
これを聞いて、皆さんはどうお感じになるでしょうか。
稲盛氏も「7つの習慣」を著したコヴィー博士も、短期的な利益や儲けだけを追求するのではなく、
「どう生きるのか」「どのような人生を送るのか」に主眼を置いていたのです。
原理原則に基づいて判断すること。
長期的なスパンで物事を見ること。
人生においても、経営においても大切にしたいことですね。
7つの習慣アカデミー協会では引き続き、『7つの習慣』の視点から稲盛経営哲学を解析・解説する動画を配信してまいります。
ぜひ、これからの動画にもご期待ください。
一般社団法人「7つの習慣アカデミー協会」 認定コンサルタント
廣瀬 公尚(ひろせ まさなお)
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。