『稲盛和夫の実学―経営と会計』(日本経済新聞出版)
「キャッシュベース経営の原則」とは、できるだけ内部留保を増やし自己資本比率を高めることで、資金繰りに困らない経営をすること。
さらには、手元資金がどの程度あるかを常に把握しておくこと。
そして、この先1年、2年にわたってどのようにキャッシュが動くかを
シミュレーションしておくことも大切だと稲盛さんは本書で説明されています。
このことを稲盛さんは「土俵の真ん中で相撲を取る」と
表現されています。
土俵の真ん中にいる時から土俵際いっぱいに追い込まれた
緊張感を持って経営をする。
そうすれば、ある程度余裕を持って経営を進められるという考え方です。
そして、こうした経営をするためには「こうすることが必要だ」と
経営者自身が強く思うことが必要、と稲盛さんは語ります。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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こうした「強く思うこと」の重要性について『7つの習慣』の著者であるコヴィー博士は
「終わりを思い描くことから始める」という表現で言い表しています。
『7つの習慣』で示される「第2の習慣」が「終わりを思い描くことから始める」です。
この中でコヴィー博士は「全てのものは2度作られる」
という原則について説明します。
全てのものは、まず頭の中で創造され、
次に、実際に形ある物として創造される。
第1の創造は「知的創造」であり
第2の創造は「物的創造」である、と説きます。
まず「知的創造」を行った後に
それをどう形にするかという「物的創造」を行う。
これこそが、私たちが実際に現実を変えていく
原動力になる、というのがコヴィー博士の主張です。
だからこそ『7つの習慣』では「終わりから思い描くことから始める」
つまり、どういうゴールに辿り着きたいのかを先に決めてから行動することを提唱します。
稲盛さんは内部留保を増やすキャッシュベース経営を「やると決めること」が必要だと語り、
松下幸之助さんは「そのような余裕のある経営が必要と思わなあきまへんな」と話したと言います。
コヴィー博士は「リーダーシップ」と「マネジメント」を
明確に区別して考えています。
「マネジメント」は最終的な結果にフォーカスし
目標を達成するための手段を考えること。
一方で「リーダーシップ」は目標にフォーカスし、
何を達成したいかを考えることだ、と言います。
そして「マネジメント」は「リーダーシップ」の後だと
コヴィー博士は書かれています。
どういう目標を達成するのか何を実現したいのかという方向性を示し
リーダーシップを発揮しないとそれをどう具体的に形にするかという
手段を考えることができない、というのです。
方法がわからなかったとしても、どうしたら実現するかが見えなくても
「そうする!」と決めること。
方向性が決まれば方法論は後からついてくる。
まさに「知的創造」が先、「物的創造」は後に来るという
第2の習慣の内容にも重なるものがあります。
今回は稲盛さんが語る「キャッシュベース経営の原則」を
『7つの習慣』と関連付けて解説しました。
7つの習慣アカデミー協会では引き続き、『7つの習慣』の視点から
稲盛経営哲学を解析・解説する動画を配信してまいります。
■「稲盛哲学 ×7つの習慣」10-3 実学 経営と会計(3)
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。