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今回ご紹介する稲盛氏の著作は
『稲盛和夫の経営塾 Q&A 高収益企業のつくり方』
(日経ビジネス人文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532194253
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企業を高収益化させるために必要な考え方や経営哲学とは何か。
そして、どんな実践が必要なのか?
今回は稲盛さんが考える「高収益企業の作り方」を解説した一冊を読み解いていきましょう。
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『高収益企業の作り方』後編
エッセンスの一部をご紹介
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前回もご紹介した通り、
本書は、盛和塾に通う経営者の皆さんからの疑問に
稲盛さんが答える「経営問答」を収録した書籍になっています。
今回は、具体的なやり取りを紹介しつつ、
「7つの習慣」との相似点についてもご紹介できればと考えています。
1つ目は、旅館を営む経営者からの質問です。
その旅館は大変歴史のある老舗で、
お客様から「施設が古い、汚い」というクレームが出始めている。
大改修したいが、コストを掛けたところで利益を上げられるかが心配・・・
という悩みを稲盛さんに相談されたそうです。
皆さんなら、どう回答されるでしょうか。
いち早く大改装に踏み切るべきでしょうか。
稲盛さんは、このように答えられたと言います。
今のあなたには、パッチワークで、古い旅館を見事に再生して見せるしかないと思います。
(中略)
膨大な経費をかけることなく、最少の経費でどこまでお客様に
満足してもらえるようなおもてなしができるかを考えるべきだと思います。
稲盛さんは、こうも言います。
大改装をしなければいけないという前提が、そもそもおかしいのではないか。
大規模改装をせずとも、できるだけ少ない経費で
お客様の満足を勝ち得ることは、工夫次第でできるのではないか。
稲盛さんは、このように経営者との問答で答えていらっしゃいます。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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コヴィー博士は書籍『7つの習慣』の中で「影響の輪に集中する」という表現が登場します。
私たちを取り巻く物事には
「自分が関心を持っていること」と「関心を持っていないこと」があります。
そして「関心を持っていること」を観察していくと、
「コントロールできること」と「コントロールできないこと」に分けられます。
この「関心を持っているけれども、自分ではコントロールできないことを「関心の輪」。
「コントロールできること」あるいは「影響を与え、変えることができること」を「影響の輪」と呼んでいます。
稲盛さんに相談した旅館経営者の場合、「設備の老朽化」や「改修費用」
あるいは「お客様からのクレーム」は
自分がコントロールできない「関心の輪」にあると言えます。
これらのことを今すぐに「コントロールできる」あるいは「変えることができる」と言えるでしょうか。
改修費用が準備できていないのであればすぐに大改修に動くことはできません。
クレームを言われないようにお客様の口をふさぐことも、もちろんできません(笑)
つまり、これらのことは「関心の輪」の中にはあるけれど「影響の輪」の外にあることです。
だからこそ、稲盛さんは
今のあなたには、様々な工夫をして古い旅館を再生して見せるしかないと伝えたのではないでしょうか。
改修費用をすぐに捻出できないなら
今、目の前でできることを考え、そのことに全力で取り組んだ方がいい。
つまり「影響の輪」に集中すべし、と。
高収益企業になるために生産性を高めるマニュアルを作るとか、
売り上げの柱を新たに生み出すとか。
もちろん、こうしたことに取り組むべき企業も中にはあるかもしれません。
しかし、稲盛さんがおっしゃるのは、
自らが現場に出て行くこと。
そして、その事業に精通する。
さらに、細かく収益を見ていく。
そうした努力の積み重ね、言い換えれば
「影響の輪」に集中することこそが組織が動いていくきっかけになる。
そう、本書で説いておられるのです。
ぜひ、『7つの習慣』も再度紐解いて
自分の「影響の輪」に集中する、ということに想いを向けていただければ幸いです。
■「高収益企業の作り方」後編
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。