『稲盛和夫の実学―経営と会計』(日本経済新聞出版)
経営者と社員との団結力を高め会社の理念やビジョンに共感し
信頼してくれる仲間を増やすために「ガラス張り経営」を進めてきた稲盛さん。
社員にも会社の状況が見えるようにするというこの経営を進めていくためには、
経営者が率先垂範して会社の理念やビジョンを実現するための努力を行うことが必要である。
これが、前回の動画の内容でした。
しかし、この「ガラス張り経営」を進めていくには、
率先垂範し、模範を示す「だけ」では足りない、と稲盛さんは言います。
今回は、その内容を解説していきましょう。
「ガラス張り経営」では、会社の状況はもちろん、
経営陣がどう動いているか何を目指しているかを社員からも見えるようにしていきます。
一方で「見えるようにしておく」だけでは足りないのだと稲盛さんは言います。
開示した数字や、経営者の考えを社員が「勝手に見てくれるだろう」ではダメで、
社員に共有し、伝達させていくこと。
このことを稲盛さんは重要視されていたのです。
会社全体の目指す方向や目標また遭遇している困難な状況や
経営課題について、社員と共有すること。
それは、社内モラルの向上に加え
全社員で進むべき方向性を合わせるためにも必要不可欠なことだと説くのです。
社員に「うまく行っていること」だけを伝えるのではなく
課題や乗り越えるべきテーマも共有すること。
「組織」とは人の集まりでありそこに所属する人たちが得たい結果や、
目指している方向性はバラバラです。
しかし、バラバラなままでは組織が目指すビジョンや大目的を
果たすことはできないでしょう。
だからこそ、情報や状況を共有し社員全員の方向性を合わせて
力を集結させ、大きくさせる必要がある。
これが稲盛さんの考え方なのです。
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稲盛さんの事例を
『7つの習慣』で読み解くと
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コヴィー博士は、著作『第8の習慣』で
「リーダーシップ4つの役割」という考え方を紹介しています。
その中の1つに「方向性を示す」という項目があります。
重要な目標を明確にし達成する決意を持たせるには
意思決定のプロセスにメンバーを参加させることが必要である。
コヴィー博士は、このように述べています。
組織やチームのビジョン、ミッション、目標を決定するプロセスに参加したメンバーは、
その目的地に至る道のりや戦略・計画を主体的に進めることができる、と言います。
そして、そのプロセスに参画する際には直面している
現実を把握してもらう必要があるとコヴィー博士は明言しています。
ただ理想だけを語り合うのではなく、現状の課題は何か、
解決すべきテーマは何かという実態・現実を把握し、
話し合うことを経てビジョンや目標を決めることが重要だと説くのです。
経営者やリーダーが指し示す方向に社員たちを導こうとするならば
現実をしっかりと仲間、社員たちが把握できる状況を作っておく必要がある、ということです。
会社が置かれている状況を隠したままで会社が進むべき方向性を示したとしても
「なぜ、それが必要なのか」
「本当にその施策に取り組むべきか」
という疑問が生じ、社員の意欲は高まらないでしょう。
コヴィー博士は、ビジョンと価値観が共有され
組織やチームに定着している状態をこう表現します。
「同じページを読む、同じ楽譜を使う」
コヴィー博士はメンバーとの情報共有は骨の折れる作業であると書いています。
しかし、こうした労力を惜しんだり、後回しにしてしまうと、
社員からいつまで経っても共感してもらえず、信頼も得られません。
そして情報共有に加え、指し示した方向へ進んでいこうと
リーダーが自ら努力するプロセスを見せていくこと。
それがなければ、メンバー全員が「同じ楽譜」を手にすることはあり得ないとコヴィー博士は断言しています。
率先垂範、模範を示すことに加え情報を開示し、共有することで、メンバーのベクトルを合わせていくこと。
この両輪で進めていかなければ「ガラス張り経営」も、
メンバー間でビジョンを共有してビジネスを進めていくこともできないということなのです。
それでは、今回はここまで。
次回もまた、稲盛経営哲学を、
コヴィー博士の考えを通して学んでいく動画をご紹介していきます。
7つの習慣アカデミー協会では引き続き、『7つの習慣』の視点から
稲盛経営哲学を解析・解説する動画を配信してまいります。
ぜひ、これからの動画にもご期待ください。
■「稲盛和夫の実学―経営と会計」vol.5
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。