『JALの奇跡』(致知出版社)
稲盛さんの経営を語るうえで欠かすことができない要素でもある「アメーバ経営」
稲盛さん自身もアメーバ経営について、何冊も著作を出されています。
アメーバ経営とは、簡単に説明すれば、「会計の仕組み」であると言えます。
社員を5〜10名ほどの小さなグループに分け、経営責任を持つリーダーを任命します。
このリーダーは「アメーバリーダー」と呼ばれます。
そして、この小グループで
日々の仕事や業績を管理しながら、実際に収益を上げることを行っていきます。
特徴的な点は、各グループ単位で収支を確認していくことにあります。
グループごとに売り上げや経費を算出し、利益がどれくらい出ているかを把握するわけです。
稲盛さんが再建に関わったJALでは、
アメーバリーダーの皆さんと稲盛さんが収支の確認をする場があったのだそうです。
その際、稲盛さんは
「どんなに細かい数字でもリーダーはわかっていなければならない」とおっしゃったのだそうです。
なぜその数字が出たのか、どうしてこういう収支になっているのか。
担当者に答えさせるのではなく、リーダー自身が理解しておく必要がある。
細かい数字を把握することで、現場に問題があることが見えてくる。
なぜその数字が出たのかを考え、それを持って現場で確認することで
数字の根拠となる現場の動きに対するリーダーの意識が高まったと言います。
その結果、もう削減できないと思われていた経費が、驚くほど下がったというのです。
アメーバ経営を導入することで
社員一人ひとりが経営者と同じ目線、あるいは同じ意識を持つようになったと言えるかもしれません。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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『7つの習慣』の著者であるコヴィー博士は、
経営における「フィードバック」の重要性について説きます。
コヴィー博士は著作の中で、「飛行機」の例え話を紹介しています。
飛行機は飛んでいるプロセスの9割近く、目的地に向かう本来の軌道からはズレて飛行している、と言います。
他の航空機と衝突事故を防ぐためや、気候や気圧の影響など、
さまざまな要因で、9割の時間は、目的地への直線距離から、ズレて飛行しているそうです。
それでも、飛行機が問題なく目的地にたどり着けるのはなぜか。
それは、飛行中、パイロットが常にフィードバックを受けているからだ、と
コヴィー博士は説明しています。
管制塔からの情報、計器からデータを読み取り
そのフィードバックを基にして調整を繰り返していく。
いま、自分たちがどういう状況にあるかを常にフィードバックを受けることで
飛行途中、軌道からズレていたとしても目的地にたどり着けるのだと言います。
目的地を定め、そこに至るプロセスを明確にしたとしても、
歩き始めてみると軌道から外れたり、違う方向へ進むこともある。
だからこそ「フィードバック」が重要だとコヴィー博士は説明するのです。
いま自分が、あるいは組織が、どういう状況に置かれているのか、
進むスピードは順調か、遅れているか、本来進むべき方向へ進めているのか。
フィードバックを受けることで初めて把握できるというのです。
アメーバ経営は社員一人ひとりにフィードバックを受ける機会が与えられる仕組みであると言えます。
そして、軌道から外れているとすれば、どうしたら修正できるかを考えるきっかけを与える仕組みである
と言えるのではないでしょうか。
動画では『JALの奇跡』について、さらに詳しい解説をしていますのでぜひ、ご覧ください。
■「JALの奇跡」vol.5
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。