『JALの奇跡』(致知出版社)
2010年に経営破綻した日本航空(JAL)
その再建を託された稲盛さんが取り組んだのは何か?
それは、
経営上の数字分析だけでなく、
現場を回り、管理職に手紙を書き、
社員に求める接客を自ら率先することでした。
前回のメールでは
「自らトリムタブになること」
「影響の輪に集中すること」
という『7つの習慣』の考え方と合わせて解説しました。
今回も引き続き、書籍『JALの奇跡』から
稲盛経営哲学、そして『7つの習慣』について学んでまいりましょう。
稲盛さんが、JALの再建初期からずっと一貫して取り組んでおられたこと。
それは「社員を信頼すること」でした。
経営者やリーダーの皆さんは、
常に結果・成果を出すことに追われています。
企業でも、チームにおいても
結果・成果を出すことが、最優先事項です。
とにかく売上を上げる、早く結果を出すことにどうしても意識が向いてしまうのも当然です。
しかし、稲盛さんは、
結果を出したいのならば、社員やメンバーと信頼関係をきちんと築くこと。
そうしないと、いいチーム・組織にはならない。経営はできない。
とおっしゃるのです。
稲盛さんはJALの再建に携わる目的として
「仲間の物心両面の幸せを追求すること」と幹部や社員に向けて発信されていたそうです。
しかし、この発言は取り方によっては、社員を甘やかしているようにも受け取れます。
あるいは、労働組合が待遇改善要求の材料に使ってくるのでは、
と危機感を持った幹部の方もいらっしゃったそうなのです。
実際、倒産する前に外部の経営者がJALの舵取りをした際
「社員を大切にする」という発信をされ、
それが原因で組合側からの要求が強くなり、
大混乱を引き起こしたことがあったそうなのです。
幹部の中には、その時の二の舞いを恐れ
「社員のためになんて言っちゃダメ」
「社員を信じるなんてしちゃいけない」と稲盛さんに直言する方もいたそうです。
稲盛さんは自分の考え方を幹部の方に伝えましたが
その方は頑として聞き入れない。
すると、稲盛さんはこう言ったそうです。
社員を信用できないのなら、幹部の価値はない。
社員を信じられないなら、幹部を下りてください。
一緒に経営することはできません。
それだけ、稲盛さんにとって「社員を信じる」ことが原則だったのです。
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稲盛さんの事例を『7つの習慣』で読み解くと
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『7つの習慣』の著者であるコヴィー博士は
経営をする上での信頼関係について、
自身の著作『第8の習慣』の中で次のように語っています。
あらゆる人間関係は信頼で成り立っている。
そして信頼は組織の接着剤の役割を果たす。
レンガを繋ぎ合わせるセメントといってもよい。
そして、こうも書いています。
信頼の源泉は三つある。
『個人の信頼性』、『制度の信頼性』、
そして、『意識的に他者を信頼する選択』である
経営者やリーダー自らが、意識的に他者を信頼するという選択をする。
その選択こそが、相手との信頼関係を築く源泉になる。
誰しも、他者を信頼することによって、他者から信頼される、というのです。
これは、稲盛さんが徹底してきたことと相通じるものがあります。
そして、
信頼の源泉となる「信頼性」とは、その人が持つ人格や能力から生まれる
とコヴィー博士は解説します。
つまり、
信頼関係を築き、改善するには、
自分自身を見つめ、改善することからしか始まらない
というのです。
いかがでしょうか。
まず、自分が人から信頼されるに足る人格・能力を磨く努力をすること。
そして、自分が人を意識的に信頼すること。
それこそが、組織やチームにおける信頼関係を築くカギと言えるのではないでしょうか。
それでは、今回はここまで。
次回もまた、
『JALの奇跡』から題材を取り上げた動画をご紹介します。
■「JALの奇跡」vol.2
鹿児島大学「稲盛アカデミー」で、生前の稲盛和夫氏から直接、指導を受ける。
その後、盛和塾所属経営者の人材育成研修会社で人材育成マネジメントに関するコンサルティング、コーチング、研修提供を10年以上担当する。
「7つの習慣アカデミー協会」代表理事・斎東亮完と出会い、法人研修講師、協会認定コンサルタントとしても活躍中。
暖かい人柄と、豊富な人材育成研修の経験から、管理職研修、新人研修などの階層別研修から、企業理念・教育制度・人事制度構築などをすすめる、「人づくり」の専門家です。